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最高裁判所第三小法廷 平成2年(行ツ)89号 判決

兵庫県芦屋市親王塚町三番九号四〇七

上告人

平松毅

奈良県北葛城郡新庄町大字柿本一一二番地の一

被上告人

山本樹脂工業株式会社

右代表者代表取締役

山本重幸

右当事者間の東京高等裁判所平成元年(行ケ)第一九五号審決取消請求事件について、同裁判所が平成二年三月一三日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 貞家克己 裁判官 坂上壽夫 裁判官 園部逸夫 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)

(平成二年(行ツ)第八九号 上告人 平松毅)

上告人の上告理由

第一点

本件再審判決の理由の三、再審事由の〈1〉についての項で述べている主張(本件判決書七丁裏第三行ないし八丁表三行)は、前訴訟の判決(第四五丁裏第八行ないし第四六丁表第五行)そのまゝを記載している。然しその前訴訟の判決書の末尾に(前同(H)参照)と注記されており前訴訟の判決書4審決の取消事由の(二)の(1)の(H)に基いて記載したものである。(H)については取消事由として原告が主張したものでない。原告の本件訴状(再審甲第七号証)で既に主張している如く、当時の準備手続担当の竹田裁判官の要請により、原告が提出した大阪高等裁判所の判決書(甲第六号証)を審査して裁判官自らの判断に基き自ら作文して書いたものである。原告自身が主張した請求原因でないことは(H)(前判決書第一七丁裏四行以降)の五行目及六行目に(甲第六号証)は、と注記していることがそれを証明している。続いて再審判決は前審決の不当を主張するのみでは前審決の取消事由たり得ないことはいうまでもないところであって、仮に明示されていなかったにせよ、原告の右主張の趣旨が、前審決は大阪高等裁判所の確定判決に抵触することの点にあったと理解すべきことは当然であると述べている。

審決自体は大阪高等裁判所の公知公用でないとの判決に抵触することを避けるために敢えて主張したと考えられこそすれ素人である原告はそんな深謀遠慮はない。そのことは前訴訟の訴状(再審甲第八号証)の四を熟読すれば明かである。

続いて本件判決はその八頁裏終行及び九頁表第一行目において「審決の認定判断は大阪高裁の確定判決と抵触するものでないことを説示しているのである。」と認定しているが前訴訟の判決第四九丁裏第四行ないし第五〇丁表三行には本判決の(中略)の部分に事実誤認の違法がある。即ち「右判決は、中井博が前記認定の玉葱袋を編成し販売したことによって本件考案がその登録出願前に日本国内において公然実施された考案に該当するかどうか、あるいは中井博が玉葱袋の編地に関する技術を了知していたかどうかについては当事者から主張がなかったため、これを判断したものでなく」と述べていることを故意に省略している。この審決容認の理由は違法であることは、前記再審甲第八号証の原告訴状の四を読めば直ちに解けるものである.かゝる判決の出るのを防ぐため裁判の冒頭において事実を明かにして置いたのである。落し穴は原告により既に埋められていたもので取消し事由たり得たものが無視されていただけである。

以上の説明により原告が前訴訟において抵触を主張したものでないことが明かになったと考える。

第二点

本件判決によれば前訴訟の判決書第八丁裏第一行ないし第九丁裏第二行に述べていることそのまま記述してこれを要するに前記証拠に関する前審決の認定判断の不当をいうものにほかならないと述べ正当に判断している。これは原告が判断して控訴の趣旨に基き不服を表明したもので当然のことである。然しそれとても証明書添付の図面を厳密に計測すれば横に向いた糸の本数が吋間一〇・三本である事実については前訴訟の裁判官も特許庁の担当審判官も当然厳密に測定すべきものであるのに調査を怠り原告に不利益な裁判をしたのである。本件判決書一〇頁八行目以降に述べている「これを受けて前訴訟の判決は……供述内容を詳細に検討していることが認められる。」と述べて打ち切っているが証明書の本数が一〇本一三本であってほぼ等しいものでないと主張されては裁判官としては証明書及び中井博の証言内容を詳細に検討することは当然なすべきことをしたに過ぎないが、この際前審決では縦一二本で横一〇・三本である事実に対する判断を遺脱していると主張しておれば一一本は平均数値であってほぼ等しいものに該当する等の判決が出来なかったものである。

原告は上訴に当る前訴訟に於ては判断の遺脱は主張していなかったことは明かである。

以上原判決はいずれの点よりするも違法であり破棄さるべきである。

以上

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